「改革」が叫ばれ続けた2021年グラミー賞 ―― テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュらの快挙、華やかなパフォーマンスは素晴らしかったけれど、根の深い課題はまたも先送りされた

1 月前
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「改革」が叫ばれ続けた2021年グラミー賞 ―― テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュらの快挙、華やかなパフォーマンスは素晴らしかったけれど、根の深い課題はまたも先送りされた

第63回グラミー賞授賞式の最優秀レコード賞の発表でリンゴ・スタービリー・アイリッシュの名前を告げた瞬間、ビリーはうなだれてその顔を帽子で隠していた。まだ19歳の彼女はスピーチで過去のアデルやマックルモアのように、「本当はミーガン・ジー・スタリオンが獲るべきだった」と言わなくてはいけない状況に追い込まれた。

“ブラインディング・ライツ”が歴史的ヒットとなったのに、全くノミネートされなかったザ・ウィークエンドが「グラミー賞は人種差別かと訊かれれば、その答えはこの62年で黒人アーティストは10組しか最優秀アルバム賞を獲っていない事実にある」と語ったが、本来新生グラミー賞を見せつけるべきだった授賞式は、そういう意味で混乱のまま終わった。

最優秀アルバム賞はこれで3度目となるテイラー・スウィフトが受賞し、最優秀楽曲賞は驚きのH.E.R.、新人賞はミーガンと予想通り女性が圧勝したが、独占はなく分け合う形となった。ビヨンセは最多ノミネートされたがいつも通り主要部門は獲らなかった。ただ今回4つ受賞し、女性アーティストとして最多の受賞数となったのが皮肉だ。

しかし、米メディアからは「コロナ禍だったがパフォーマンスは楽しめた」という声が多く、時代遅れだったグラミー賞は、パフォーマンスも受賞者も若返りを果たしたとの指摘もあった。

パフォーマンスのハイライトは、BLMムーブメントをパワフルに表現したリル・ベイビーの“ザ・ビガー・ピクチャー”とダベイビーの“ロックスター”。この日の主役だったミーガンの受賞スピーチは感動的だったし、カーディ・Bとの“WAP”のステージは超過激で、しかしそれが女性たちの誰にも支配されないという自由を表現していて最高だった。

ハイムやハリー・スタイルズは今の時代のロックを軽やかに披露し、デュア・リパやシルク・ソニックはレトロ・サウンドで気持ち良く踊らせてくれた。BTSは誰より突き抜けたポップ・パフォーマンスを堂々見せたし、今回初めて最優秀ラテン・ポップ・アルバム賞がTV放送され、バッド・バニーが受賞。代わりにロック部門の放送がなくなったが、デビュー20年にしてロック・アルバム部門で初のグラミー賞を受賞したザ・ストロークスがグダグダなスピーチで完璧に彼ららしさを貫いていて良かった。

視聴率は歴史的な低さだったが、今回の若返りでコロナ後に若者は戻ってくるのか? またはザ・ウィークエンド同様永遠に戻らないのか? 来年も文句を言いつつ期待したい。 (中村明美)


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